第78章 彼女を手に入れられず、悔しい

夏川紅蓮が静かに言った。

「高見さん、これからは紅蓮って呼んで。私の素性、あまり知られたくないの」

彼女はもう、治療で金を稼ぐ必要なんてない。

押し寄せられたら面倒が増えるだけだ。

「わ、分かった。じゃあこれからは紅蓮って呼ぶよ」

高見正国は笑みを作ると、隣の高見浩然の肩を軽く引いた。

「浩然はな、あの日以来ずっと気にしてるんだ。紅蓮さんを疑ったことも、脅すような真似をして祖父の治療を迫ったことも……今日はわざわざ俺に頼んで、一緒に謝りに来た」

正国は、二人の空気を和らげたいのだろう。

浩然は電話で、諏訪淳行が公の場で「夏川紅蓮は自分の婚約者だ」と口にした、と言っていた。

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