第84章 諏訪淳行に頼む

夏川懐理は、いつの間にか両手をきつく握りしめ、拳を作っていた。額には青筋まで浮いている。

「理由を知ってたなら、どうしてもっと早く言わなかったんだ。俺に……懐星兄さんにも」

夏川瑠璃は唇を軽く噛み、ぽつりと言った。

「だって、その相手……私じゃ手が出せないもの」

「お前……」

夏川懐理が爆発しかけた瞬間、瑠璃は被せるように遮った。

「懐理兄さん、もういいから。答えて。取引、するの? しないの?」

夏川懐理は奥歯をぎり、と噛みしめる。胸の内の怒りが、今にも噴き上がりそうだった。

けれど瑠璃は、急に声色を落とした。

「懐理兄さん……今回だけ。お願い。私、ほんとに……」

夏川懐...

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