第88章 助ける義理がない

夏川瑠璃は反射的に言い返しかけた。

田舎から出てきたばかりの夏川紅蓮が、あの謎に包まれた絵画界の大先生――山河であるはずがない。

きっと相馬照が、夏川紅蓮に騙されているのだ。

だが瑠璃は、ふと別の記憶に引っかかった。

未来の境へ連れていった須藤美代も、同じことを言っていたのだ。

まさか……。

夏川紅蓮が、本当に山河――?

相馬照はなおも続ける。

「俺が絵で行き詰まったとき、師匠が手取り足取り教えてくれた。どう突破するか、な。俺が自分で師匠の前に跪いて、弟子にしてくれって頼み込んだんだ。俺が間違えたって? 笑わせるな!」

その言葉を聞いた瞬間、夏川瑠璃は目を見開いた。眼球が落...

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