第55章

鈴原明志と葉山詩音が信じがたいのはもちろん、番組スタッフ側も少なからず驚いていた。とりわけ田山監督が。

というのも、この課題は――そもそも田山監督が鈴原明志のために用意したものだったからだ。

何しろ鈴原明志は、S市の鈴原家の若様。バックボーンは軽くない。できることなら、正面から揉めて顔を潰し合うような展開は避けたい。

それに田山監督は企画兼ディレクターとして、番組全体の流れと見せ方を握っている立場だ。誰か一人に露骨に肩入れしてしまえば、番組として歪む。全員に見せ場を配り、どこから見ても穴のない一本に仕上げなければならない。

幸い、鈴原明志は実力のあるシンガーだ。だからこのパートを当て...

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