第85章

S市、DHマンション。

沈村蓮はあのメッセージを送ると、返信を待つこともなく書斎を出た。

ところが廊下へ出た途端、スマホが鳴った。発信元は、例のオークションハウス。

――いつもはメッセージでのやり取りが基本で、電話なんて滅多にない。必要がない限りかけるな、と前に言っておいたはずだ。

沈村蓮はわずかに眉をひそめ、キッチンへ向かう。冷蔵庫を開け、冷えた缶ビールを一本取り出して通話をつないだ。

まだ何も言わないうちに、向こうから切羽詰まった男の声が飛んでくる。

「浮世さん……本当に、浮世さんなんですか?」

――T市の闇オークションを仕切る方村様、その孫の方村閣。たしか、そんな名前だっ...

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