第90章

葉山成也たち三人は、その言葉を聞いた瞬間、揃って固まった。耳がおかしくなったのかと疑うほどに。

「誰だって? 方村若様、いま……彼女が誰だって言いました?」

方村閣は声を落とし、重々しく言い直す。

「浮世だ。道上で名を知らぬ者はいない調香師、浮世。お前たちが昔うちの競売で落とした沈香も、あの方の手によるものだ。いいか、二度と沈村蓮さんに無礼を働くな」

言い終えた途端、エレベーター内が凍りついた。

三人は目を見開き、沈村蓮を凝視する。

沈村蓮は相手にする気もない。両手をポケットに突っ込み、壁にもたれたまま表示灯をちらりと見た。一階までもうすぐ。

やっと、葉山家のあの連中と同じ箱の...

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