第110章

「高森さん?」

「小林さん、夜分にすみません。実は折り入ってお願いがありまして……」電話の向こうの高森さんは、何やら切羽詰まっているようだった。

私は眉をひそめた。二つ返事で引き受けるわけにはいかない。事情も聞かずに安請け合いして、手に余るようでは困るからだ。

「どうしました? 何かあったんですか」

高森さんは申し訳なさそうに切り出した。「こんな時間に本当にすみません。実は、玖珂社長のことなんですが……社長が体調を崩されまして。ですが、私の母が手術することになり、妻も妊娠八ヶ月で、どうしても手が離せないのです。小林さんなら社長のご自宅もお近いですし、大変厚かましいお願いとは存じますが...

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