第125章

藤原純がじりじりと距離を詰めてくる。私の目の前でナイフを弄んでみせるが、突き刺してくる様子はない。

「藤原純、どうやって病院から抜け出してきたの?」

疑問だった。たとえ仮病だとしても、彼のような重要参考人の病室には警察の監視がついているはずだ。それなのに、どうやって監視の目をかいくぐり、ここまで平然と現れることができたのか。

藤原純は何も答えなかったが、その唇の端が歪み、得意げな笑みを浮かべた。

その時、若い女が軽食を手に部屋に入ってきた。藤原純に向ける声は甘ったるく、どこまでも優しい。

「藤原社長、もういいですか? いつ出発します?」

入ってきた人物の顔を見て、聞き覚えのあるそ...

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