第128章

「小林夕子、逃げられると思うなよ!」

 身を起こした藤原純が、狂ったような形相で追いかけてくる。

「行かせない……行くなら私も連れてってよ、置いて行かないで!」

 だが、山下咲が藤原純にしがみつき、彼を離そうとしない。

 激昂した藤原純は、邪魔だと言わんばかりに山下咲を蹴り飛ばした。

 ドカッ、と鈍く重い音が響き、彼女が床に転がる。

 その隙に、私は一瞬の躊躇もなく駆け出した。

 山下咲にあれほど非道なことができる男だ。私に対して手加減などするはずがない。

 エレベーターのボタンを何度も連打するが、箱は一向に上がってこない。

 焦燥感が募る。

 そうだ、非常階段だ。

 ...

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