第137章

まさか玖珂智が、階下での出来事を知っているとは思わなかった。

今日、あんな騒ぎになったのは私だけだ。だから、彼が言った『警備員に守られた社員』というのは、間違いなく私のことだ。

「承知いたしました、玖珂社長」

倉田明は指示を受けると、すぐにオフィスを退出した。

私は我に返り、コーヒーを彼の左手に置いた。今朝のことを説明すべきか、一瞬迷う。

玖珂智はカップを持ち上げ、一口すすると口を開いた。

「うちの万陽が長崎と組むとしても、主導権はこちらにある……」

「え?」

唐突な言葉に、私は首を傾げる。

てっきり彼は警備員に感謝していたし、私を支持してくれているのだと思っていた。だが今...

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