第61章

「それで、水野翠子はどうなってるの? まだ四つ葉団地に住んでいるわけ?」私は思わず尋ねた。

大林海人は大袈裟に舌を鳴らし、答える。

「いや、もう出ましたよ。一週間ちょっと前ですね」

意外だった。

あの強欲な老婆が、大人しく出ていくとは。

「どういうこと?」

大林海人は何とも言えない、呆れたような顔を見せた。

「正直なところ、あの水野翠子ってのは極めつきのタマですよ。俺もこの業界長いですが、あそこまでの毒婦はそうそうお目にかかれません」

私はコーヒーを一口啜る。

妊娠中は子供のために徹底してカフェインを断っていたから、久しぶりのこの香りが、以前にも増して愛おしく感じる。

飲...

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