第62章

大林海人は緊張と不安を滲ませた顔で、私を見つめていた。

「小林さん、俺はしがない善良な市民ですよ。法に触れるような真似はご免です。それに……あのクズ男に騙されたとはいえ、あなたの未来はまだ長い。まだお若いんですから、あんな男のためにご自分の人生の道を狭めるようなことは……」

探偵のくせに、随分と怖がりなことだ。

私は軽く笑って見せた。

「誤解しないで。安心して、私だって善良な市民よ。法を犯すつもりはないわ。あくまで『狂言』……つまり、あの女を少し脅してやるだけ」

私は声を潜め、計画を続ける。

「水野翠子なんて所詮、内弁慶なだけよ。家で喚き散らすのは得意でも、本物の悪党を前にすれば...

ログインして続きを読む