第63章

「この曲……懐かしいですね。二人で聴くのは、どれくらいぶりでしょうか」

藤原純は感慨深げに呟いた。

その穏やかで優しげな横顔を見ていると、意識が少し遠のくような感覚に襲われる。まるで彼が、かつて私が心の底から愛した、あの優しい男性そのものであるかのように――だが、それは単なる錯覚に過ぎない。

彼は最初から最後まで、恩を仇で返すような冷酷な男だったのだ。以前は猫を被るのが上手かっただけ。今はもう芝居を続ける気が失せたのか、少しずつその本性を現し始めている。

それでも、私は頷いてみせた。

「ええ、本当に久しぶりね」

藤原純には一目惚れだった。だから、この曲も大好きだったのだ。彼が私に...

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