第70章

胸がざわりとした。

何かが脳裏を鋭くよぎった。だが、それが何なのか思い出せない。

「まさか、あの時あなたが言っていた理由じゃないわよね? 会社から遠いし、朝早く起きて私の安眠を妨げたくないから、なんて」

私は皮肉を込めて言った。

藤原純はくつくつと笑った。

「ようやく現実が見えてきたようだね。もちろん、そんな殊勝な理由じゃない。単に縁起が悪かったからさ。なぜ縁起が悪いかって? あいつは僕の手にかかって死んだからだよ」

私は息を呑んだ。藤原純の言葉が信じられず、耳を疑う。

これは幻聴に違いない。

「何て言ったの? この人でなし、はっきり言いなさいよ!」

私は叫びながら立ち上が...

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