第80章

川崎志乃は、私が動揺し、怒り狂う様を見たいのだ。

だが、そんな思い通りにはさせてやらない。

川崎志乃は、私の微細な感情の変化を鋭敏に感じ取ったのか、さらに言葉を重ねてくる。

「藤原純も、そこまで馬鹿じゃなかったわ。人目を避けることぐらいは心得ていたもの。あなたとの関係があれだけ目立っていたから、私たちの逢瀬はコソコソしたもんだったわよ。それが不満だったの。私が求めていたのは、真実を知ったあなたが絶望に沈む姿なんだから」

彼女は愉悦に浸るように目を細めた。

「だから彼に言ったの。『私と続けたいなら、あの女と別れて』ってね。でも、彼はあなたを二、三年も追いかけ回していたんでしょ? そう...

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