第92章

天川彩香が指差す方を目で追った。

まさか本当に、あの洋館がうっすらと見えるとは。

私はこめかみを揉んでみるが、どうやってここに運ばれたのか、記憶がすっぽりと抜け落ちている。

思い出せないぶん、余計に最悪な予感がした。

私は恐る恐る尋ねた。

「彩香、私……酔っ払って変なこと口走ったり、奇行に走ったりしてないよね?」

ここ最近、藤原純の一件で感情を押し殺していたから、タガが外れて酒乱になったり、泣きわめいたりしていないか心配だった。

そんな醜態、恥ずかしすぎて死ねる。

酔っ払って無様をさらけ出す人たちを見てきただけに、自分がそうなっていないか不安でたまらない。

天川彩香は手際よ...

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