第17章 佐々木佳恋、準備はできたか?

もうあのクソップルに心を揺さぶられることはないと思っていたのに、この光景を目にした時、足を止めずにはいられなかった。胸の奥に広がる悲しみを感じながら。

少なくとも、あいつは私にこんな情熱的なキスを一度もしてくれなかった。

バラの花を持った男性が通り過ぎるのを見て、やっと気づいた。今日はバレンタインデーじゃないか!

このビッチカップルもバレンタインを過ごしに来たんだろうな。

昔から、渡辺光はこういう特別な日を全く覚えていなかった。単純に理系男子だからだと思い込んで、こういう男性なら生活していけると自分を騙し続けていた。

今思えば、あの頃の自分は本当に滑稽で哀れだった。

そして、二人...

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