第50章

来る前に、全ての心の準備はできていた。

ここまで来たからには、もう逃げる理由はない。

直感に従って、左側の部屋のドアをノックすると、開けたのは昨日藤原大輔と一緒にいたあの女性だった。

「誰を探してます?」彼女の声は、その容姿と同じく初々しかった。

彼女のお腹の大きさを見ると、私が藤原大輔を知るよりも前からの関係のようで、先後関係で言えば、存在してはいけないのは私の方だ。

だから彼女の前で私の痛みや憎しみを表す資格もなければ、ましてや問い詰めたり追及したりする資格もない。私はただ真実を求めているだけだ。

「こんにちは、藤原さんのアシスタントです。出産経験があるので、彼がお嬢さんと話...

ログインして続きを読む