第53章

私たちはそれぞれ麺を食べていて、最初にお互いを一言ずつ皮肉って引き分けた以外は、まるで全く知らない他人のように、その後一切会話を交わさなかった。

彼が帰る時に丼の下に置いていった麺代を見て、これからは二度と関わることはないだろうと本当に思ったのだけど、縁というのは時に運命のように、逃げようとしても逃げられないものなのだ。

翌日、八月十五日、ちょうど私は休みだった。

起きると、ベッドの脇に置かれた七十六万円のドレスが目に入った。藤原大輔が置いていったのだろう。

彼の意図は分かっていたし、特に悩むこともなくそれを着ることにした。

このドレスを着て結婚式に参加するのは、せいぜい秋山美咲を...

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