第54章

洗面所から出ると、私の感情は大分落ち着いていた。

藤原大輔は私を連れて二階の手すりのところに立っていた。

「ここで何をするの?」と私は尋ねた。

彼は手すりに寄りかかり、一本のタバコに火をつけた。白い煙が彼の目の前に広がる。

「高いところに立てば、遠くが見える」

秋山美咲はちょうど数人の友達と話していて、楽しそうに笑っていた。だが、彼女が何気なく顔を上げて私を見たとき、笑顔はたちまち崩れ、まるでナイフのような視線を投げてきた。

「ご親族の皆様、ご来賓の皆様、こちらをご覧ください」

ウェディングプランナーが突然マイクを持って壇上に上がり、すべての来客の視線を集めた。

「新郎新婦の...

ログインして続きを読む