第60章

階段の入り口までふらふらと歩いた私は突然立ち止まった。比留川又平の問いかけのせいではなく、暗い階段の中で揺れる火の光が見えたからだ。

酔っていても、私の直感はやはり鋭かった。

あれは藤原大輔だと分かっていた。

数秒後、火の光が地面に落ち、革靴で踏み消された。

藤原大輔が立ち上がり、私たちの方へ歩いてきた。

私は本能的に後ずさり、足元がふらつく中、比留川又平が引き続き私を支えていた。

「彼女、酔ってるんだ」と彼は言った。

藤原大輔は低く「ん」と一声出して「ご苦労さま、飛行機から降りてずっと休んでないだろう。先に休みに行ってくれ」

そう言いながら彼は比留川又平から私を受け取ろうと...

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