第2章
朝の光が、高橋真一の西湖にある豪邸の一面の窓から差し込み、飯島県特有の黄金色の光で、すべてを染め上げていた。
まさか、自分が目に見えない囚人のように、この中に閉じ込められることになるなんて、夢にも思わなかった。
この忌々しい家から出ようと、私はあらゆることを試した。玄関のドアに向かって漂っていこうとしたし、自分のオフィスに戻ろうと強く念じてもみた。空っぽの病院のベッドを前に、きっと泣き崩れているであろう母に会いに行こうともした。
だが、高橋真一から十五メートルほど離れようとするたびに、見えない力にぐいっと引き戻される。まるで、宇宙的なリードに繋がれた犬みたいに。
そんなわけで、私はここにいる。午前七時、夫が愛人のために朝食を作りながら鼻歌を歌っているのを、見ているしかなかった。
キッチンアイランドのそばを漂いながら、彼が、まるで大切なお客さんに出す料理のように新鮮なオレンジのスライスを丁寧に盛り付けているのを見ていた。いつの間に、こんな料理ができるようになったのだろう。
「んー、すごくいい匂い」小嶋美咲は、後ろから高橋真一の腰に腕を回しながら、甘ったるい声を出した。
高橋真一は彼女の抱擁の中で振り返ると、その顔をぱっと輝かせた。
「私の命の恩人には、最高のものをね」彼はそう言うと、慈しむような優しさで彼女の額に唇を押し当てた。
「美咲、今日は葉山牧場の物件を見に行くんだ」高橋真一は彼女の腰から手を離さないまま続けた。「飯島県で一番美しい不動産の女王になる準備はできたかい?」
小嶋美咲の笑い声は、蜂蜜と毒を混ぜ合わせたようだった。「あなたがそばにいてくれるならね。あ、それと、昨日の夜に準備してくれた資料、すごく詳しかったわ」
「完璧に仕上げるために、夜中の十二時までかかったんだ」高橋真一は答えた。「葉山家は飯島県の昔ながらの石油成金だからな。徹底した準備を重んじるんだよ」
その記憶が、貨物列車にでも撥ねられたかのような衝撃で私を襲った。三週間前、午前二時に私が書類に覆いかぶさるようにして眠りこけているのを、高橋真一が見つけた時のことだ。
「理紗、どうしてまだ起きているんだ?」と彼は尋ねた。
私は答えた。「あなたのプレゼンが完璧になるようにしたいだけよ、真一」
彼は言った。「勝手にしろ。どうせベッドに這いずってくるんだろうが、俺を起こすなよ」
なのに今、彼はここにいる。私が行ったリサーチの手柄を自分のものにし、まるでどこかのお姫様みたいに、他の女に朝食を食べさせている。
星川市の中心街にあるショッピングモールは、まるで神殿のように煌びやかに輝いていた。
高橋真一と小嶋美咲がハンドバッグ売り場をぶらぶら歩くのを、私は後ろから漂いながらついて行った。彼女の指先が、ほとんどの人の家賃よりも高価なレザーの上を滑っていく。
「これだ」高橋真一は、恭しい手つきでブルゴーニュ色のバッグを持ち上げながら言った。「君に似合う」
五十万円。その値札は、まるで私の血で書かれているかのようだった。
小嶋美咲は、純粋な喜びの声を上げた。「真一、だめよ。高すぎるわ」
高橋真一は答えた。「君のためなら、何も高すぎるものなんてないさ。この世のすべての美しいものに値するんだから」
彼は顔色一つ変えずに自分のクレジットカードを差し出した。
この、クソ野郎が。
その記憶が、容赦ない波のように私に打ち寄せた。十八ヶ月前、同じ店で、私がシンプルで実用的な茶色い革の仕事用バッグを手にしていた時のことだ――三万円だった。
高橋真一は言い返した。「理紗、正気か? バッグに三万だと? 会社は火の車なんだぞ、それなのにアクセサリーに金を無駄遣いしたいのか?」
私は言った。「仕事用よ、真一。今使っているのはもうボロボロなの」
彼は答えた。「だったらガムテープでも貼っておけ。まったく、なんて自己中心的なんだ」
その日、私は手ぶらで店を出た。それから六ヶ月もの間、スーパーのトートバッグに書類を詰め込んで持ち歩き、ドンキで買った四千円のバッグでさえ、その出費を正当化できるまで待たなければならなかったのだ。
なのに、目の前の小嶋美咲は歓声をあげている。
「もう、甘やかしてばかりね」彼女はそう言ってくすくす笑い、彼の胸に体をすり寄せた。
「君は甘やかされるべきなんだ」高橋真一は、私が一度も向けられたことのないような熱を込めた声でつぶやいた。「君は私の命を、事業を、すべてを救ってくれた。君に世界を捧げずにはいられないだろう?」
『私があなたに世界を捧げたのに。私の世界のすべてを、あなたに捧げたのに』
夕暮れの光が、星川市のスカイラインを琥珀色と薔薇色に染め上げていた。私たちは小嶋美咲の高層マンションのバルコニーに座っていた――もちろん、高橋真一が家賃を払っている部屋だ。
二人は高級レストランでのディナーから帰ってきたばかりだった。そこでは、店員がまるで王族の訪問客のように二人を丁重にもてなし、会計の際に高橋真一が感謝の言葉とともに深々と頭を下げるのを私は見ていた。
去年、私たちの結婚記念日に連れて行ってと私がせがんだ、あのレストランだ。
「気取りすぎだよ、理紗。それに高い。サイゼリヤじゃだめなのか?」彼はそう言った。
だがどうやら、小嶋美咲には店で一番良い席と、二万円のワインボトルがふさわしいらしい。
「真一」小嶋美咲は今、手入れの行き届いた爪で彼の前腕に模様を描きながら言った。「明日の契約、すごく複雑なの。見直すのを手伝ってくれないかしら? 何も台無しにしたくないの」
その頼みは、絹で包まれた純粋な人心掌握術だったが、高橋真一は八月のアイスクリームのようにとろけていた。
高橋真一は答えた。「もちろんさ、美咲。君はただ、美しい君のままでいることに集中して。退屈な書類仕事は全部私がやるから」
別の記憶が、腹に突き刺さるナイフのように蘇る。オフィスのプリンターが壊れたからと、クライアントとの会議のための契約書を印刷するのを手伝ってほしいと高橋真一に頼んだ時のことだ。
「理紗、君は俺のアシスタントじゃなかったのか? これは文字通り君の仕事だろ。自分でなんとかしろ」
私は午前六時にコンビニまで車を走らせてすべてを印刷し、まるで夫に雇われ人のように扱われたことなどないかのように、プレゼンの間中、笑顔を絶やさなかった。
だが、小嶋美咲は至れり尽くせりのサービスと、ワインと、キャンドルライトを手にしている。
夜が更けて涼しくなると、二人は部屋の中へ移動した。小嶋美咲が手慣れた誘惑で高橋真一を寝室へと導いていく。私は目をそらすべきだった。私を自分だけの地獄に閉じ込めるこの宇宙的な束縛から、もう一度自由になろうと試みるべきだった。
その代わりに、私は見てしまった。高橋真一がベッドサイドテーブルで立ち止まり、静かに結婚指輪を外すのを。
私たちの結婚指輪。私が何か月もかけて貯金して買った指輪。そこには小さな文字で『永遠にあなたのもの、理紗より』と刻まれているのに。
彼はそれをナイトスタンドの一番奥に、まるで恥ずべき秘密のように小嶋美咲の宝石箱の陰に隠して、そっと置いた。
『私たちの結婚の誓いでさえ、もうあなたには何の意味もないのね』
小嶋美咲はすでに絹のシーツの下にもぐりこみ、誘うように両腕を広げていた。そして高橋真一は、アクション映画やロマンス小説の中にしか存在しないと思っていたような、必死の飢えをもって彼女のもとへ向かった。
クライアントの資料を準備するために夜中まで起きていた妻のためではなく。
夫の野心のために自分の夢を犠牲にした女のためではなく。
私のためにでは、なかった。
夫が、私には一度も見せたことのない情熱で他の女と愛を交わすのを漂いながら見ているうちに、一つの恐ろしい真実が私の意識の中で結晶となった。
高橋真一は、私がずっと彼に愛されたいと夢見ていた方法で、小嶋美咲を愛している。
そして私は死んでしまったから、彼は決して私をそのようには愛してくれないだろう。






