ピース・アンド・カオス

トラリスの境界のすぐ向こうでポータルが揺らめき、私を冷涼な朝の空気の中へと吐き出した。ここの匂いはレッドムーンとは違う。松と、鉄分を含んだ土、そして風にまとわりつく微かな煙の匂い。以前にもここに来たことはあったが、今この地を踏みしめる感覚は、以前よりも重く感じられた。まるで大地そのものが、かつてここで流された血を記憶しているかのようだ。

木立の沿いに配置された警備兵たちは私の姿を認めると身を硬くしたが、武器を抜くことはなかった。その中の一人が短く頷くと、狼の姿に戻り、領土の中心へと疾走した。私の到着を知らせに行ったに違いない。

中央の広場に着く頃には、ザイオンがすでにパックハウスから姿を現...

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