ワンス・アポン・ア・タイム.

まだ母さんの腕の中にいたとき、裏口のドアがきしんで開いた。親父が庭から入ってくる。泥だらけのブーツに、捲り上げた袖。その体には煙と松の匂いがまとわりついていた。親父は俺を一目見ると、ニカっと笑った。その腹の底から響くような笑みを見ると、どんなに心が重くても、つい釣られて笑ってしまうのだ。

「おや、暗がりから誰が這い出てきたかと思えば」親父はそう言うと、俺の背中をバンと力強く叩いた。「どうしたんだ坊主、こんなところで」

俺は努めて何でもない風を装い、肩をすくめた。「しばらくここに居させてもらおうかと思ってさ。構わないなら、だけど」

親父が口を開くより早く、玄関のドアが勢いよく開いてエリアス...

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