魚。

エンヴィー

「わあ……」

思わず息が漏れた。いつの間にか呼吸を止めていたことにも気づかなかった。ヨットの手すりから見下ろす海は、信じられないほど透き通っていて、まるで青く磨かれたガラスのように陽の光を受けてきらめいている。ザビエルが私の背後に立ち、手すりを掴む私の両脇に彼の手をついた。背中に感じる彼の胸板は温かい壁のようで、揺るぎなく、確かな存在感を放っている。まるで彼が錨(いかり)となり、私がどこかへ流されてしまわないように繋ぎ止めてくれているかのようだ。

「泳ぎは得意か?」

耳元で低い声が囁く。私は彼と視線が合うギリギリの角度まで顔を向けた。

「もちろんよ。どうして? も...

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