ザ・ヴェール

玉座の間が周囲で揺らめき、黒曜石の壇から降りる私の周りで影が折り重なっていった。ザビエルの手は片時も私から離れることなく、その感触は燃え盛る炎を鎮める霜のように、私を現実に繋ぎ止めていた。私はラヤの方を向いた。彼女は自分の玉座の傍らで気だるげに伸びをしていたが、その不敵な笑みは、私がほんの一瞬でも躊躇えば混沌を巻き起こすと告げていた。

「行くわよ」

静かにそう言ったが、そこに込められた魔力は命令のように鋭く響いた。大気がひび割れる。ポータルが花開くように現れ、私たちは共にその中へと足を踏み入れた。

冥界の景色が遠ざかり、目の前に母の王国が浮かび上がる。母の領分特有の馴染み深い温もりが、陽...

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