第二百七十五章

――セフィ

彼を見ると、なぜか奇妙なほど心が落ち着いた。私の顔に浮かんだ驚きの色を見て取ったのか、彼は片方の眉を上げた。むしろ私としては、彼が驚いたような顔をしていることの方が不思議だった。

「瞳の色が黒に近いな、プリンセス。そのままでいろ。きっと役に立つ」

彼はそう言って、私にウィンクしてみせた。

上等じゃない、クソ野郎ども。

車が猛スピードで街を駆け抜ける中、私は結束バンドで縛られた手のまま、必死にイヴァンにしがみついていた。イヴァンが運転していた時はペントハウスのある南へ向かっていたはずだが、今は北へ向かっている。街のどのエリアに向かっているのかは分からないが、ろくな場所ではないこ...

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