チャプター 30

セフィ視点

片付けをしていると、トリがキッチンを通っていった。ジムに行くような格好をしていて、立ち止まるとこう尋ねてきた。「ジムには誰かいますか?」

「ううん、いないよ」私は答えた。「みんな出払っちゃったし、私たちも終わったところだから」

彼女の表情が一瞬曇ったのを私は見逃さなかった。彼女はアンドレイに視線を向けたが、彼は彼女を直視したら石にされるとでも思っているかのように、うつむいていた。

(アンドレイ、彼女はメドゥーサじゃないんだから)

私は彼女に微笑みかけ、肩をすくめてから、顎でアンドレイの方をしゃくってみせた。彼女はほんのりと頬を染め、そのまま行ってしまった。彼女がキ...

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