第五十二章

セフィ

車は家を離れ、都心へと向かっていった。このダウンタウンの一画は、私が働いているレストランからそれほど遠くはなかったけれど、ここに来る理由はあまりなかった。グラントが酔いつぶれて寝るのを待っている間、時々ダウンタウンを走り抜けることはあったけれど。ビルは次第に高くなり、歩道を行き交う人々の数も増えていく。私たちは小さなカフェの前を通り過ぎた。その頭上には「ヴィニーズ」と書かれた巨大な看板が掲げられていた。

「ねえ、あれって世界一美味しいサンドイッチ屋さん?」通り過ぎざまに私は尋ねた。

「唯一無二の名店さ」ヴィクトルが助手席から答えた。

数ブロック進むと、車は地下駐車場へと...

ログインして続きを読む