第32章

「篠原菫子!篠原菫子!目を覚ませ!」藤原和也は手を伸ばして篠原菫子の額に触れると、彼女が高熱を出していることに気づいた。

男は篠原菫子を抱き上げ、素早く車へと向かった。ドアを開け、篠原菫子を車内に寝かせると、自らも乗り込んでエンジンをかけた。車の排気管から黒い煙が一瞬吐き出されると、矢のように走り去った。

林田月は後ろから必死に泣き叫んだ「和也お兄ちゃん……」

しかし、藤原和也の車はすでに姿を消していた。

林田月は怒りのあまり、藤原和也のマンションの入り口にある花壇を必死に叩きつけた。手の甲の皮が擦り剥けて血が出ても、痛みに耐えきれず地面に座り込んで号泣した。

泣き疲れた彼女は、恨...

ログインして続きを読む