第38章

藤原和也は高橋亮太の車が遠ざかるのを無表情で見つめていた。

背後から、山田宏が声をかけた「藤原さん、あの車……高橋さんのじゃないですか?高橋さんがここに来て、奥様に会いに?」

山田宏は先ほど駐車に集中していたため、篠原菫子が高橋亮太の車から降りるところも、彼女が高橋亮太に笑顔を向けるところも見ていなかった。

藤原和也の声は低く淡々としていた「高橋亮太の心の中では、俺の母は彼の叔母ではない。今、叔母さんと呼んでいるのも、単に俺を恐れているからだ」

言い終えると、藤原和也は一人で病院の中へ入っていった。

母は最近、顔色がずいぶん良くなっていた。あと一ヶ月の命とは思えないほどだった。藤原...

ログインして続きを読む