第53章

篠原菫子の悲鳴は途中で途切れ、藤原和也の腕の中で止まった。男は片腕で彼女をしっかりと抱き寄せ、彼女の目を自分の胸に押し当てた。篠原菫子は何も見えなくなった。

だが、これまで感じたことのない安心感に包まれていた。

次に、彼女の耳も藤原和也の大きな手で覆われた。

その後、篠原菫子は花火や爆竹のような鈍い音が四、五回響くのを聞いた。

篠原菫子は思わず男の胸にさらに身を寄せた。

男が彼女の耳を覆っていた手を離すと、山田宏に向かって「行くぞ」と言うのが聞こえた。

車は「シュッ」と音を立てて走り去った。

篠原菫子は徐々に男の腕の中から体を起こした。顔は真っ赤に染まり、藤原和也を直視する勇気...

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