第9章

篠原菫子の心臓がドキリと鳴った。

藤原和也のような男性は、彼女などいくらでもあるはず。藤原和也が彼女と結婚するのは、もうすぐ亡くなる母親に悔いを残させないためだけだった。

しかし、篠原菫子は藤原和也の彼女が林田月だとは思いもよらなかった。

人生は皮肉なものだ。

かつて彼女を虐げていた人たちはますます幸せに、ますます華やかになっていく。一方の彼女は、未来が崩れ、未婚で妊娠し、お腹の子供の父親が誰なのかさえわからない。

目の前の釣り合った家柄の美男美女を見て、篠原菫子は自分が道化のように感じた。

どうやら、林田月が母親の写真を取りに来させたのは嘘で、わざわざ彼女の前で自慢の彼氏を見せ...

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