第5章

 リビングは、息が詰まるほど静かだった。

 私はスマホを見ているふりをしながら、実際はずっと准一を盗み見ていた。

 准一は手元の本をじっと見つめたまま、ぴくりとも動かない。同じページをもう十分も眺めている。

 笑いをこらえ、私は時間を数えた。

 窓の外の夜は、じわじわと濃くなる。

 五分。十分。十五分。

 それでも准一は、その一ページから目を離さない。

 もう限界だった。向こうから動くのを待つ? そんなの一生待っても来ない。

 私は立ち上がる。

「着替えてくるね」

 准一は顔も上げずに答えた。

「うん」

 二階へ上がり、私はスーツケースへ一直線。深い紺のビキニを取り出...

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