第102章

そのとき、ドアがノックされた。

松村礼嗣は淡々と「入れ」とだけ言う。扉が押し開けられた瞬間、彼は顔を上げ――そのまま、全身が固まった。

立っていたのは、平原綾香だった。

「……君……」

松村礼嗣はほとんど反射で立ち上がる。

「やっと、会いに来てくれたんだな」

だが平原綾香は、感情の波を見せない。まっすぐ彼の前まで歩み寄り、手にしていた分厚い図面の束を、どさりとデスクへ置いた。

「設計図は全部、仕上がりました」

声は静かで、揺れがない。

「工場側とも段取りは済んでます。いつでも量産に入れます。発表会、準備してください」

松村礼嗣は一瞬目を瞬かせた。

「……そんなに急ぐのか...

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