第112章

平原綾香はスタジオを出たばかりで、階下のカフェでアメリカーノでも買って眠気を飛ばそうとしていた。

スマホに目を落としたまま歩いていて、廊下の曲がり角に人がいることに気づかない。

顔を上げた瞬間、身体がわずかにびくりと震えた。

遠山景幸が、数歩先に立っていた。手には書類フォルダ。上の会議室から出てきたところらしい。

……まあ、避けようがない相手ってのは、結局どこかで会う。

平原綾香は心の中で小さく息を吐いた。

『遠山様、お久しぶりです』

軽く会釈する。

遠山景幸は彼女をまっすぐ見つめた。その目の奥で、感情が渦を巻いている。

声はどこかぎこちない。

『……久しぶりだな』

会...

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