第116章

平原綾香は、モニターに映る電子式の暗証ロックを見つめ、眉をわずかに寄せた。

『平原光。このロック、解ける?』

平原光は画面へ身を乗り出し、じっと観察する。

『……ちょっと厄介だな』唇を引き結び、困ったように目を細めた。『この型、たぶん特注だ。暗号強度が高い。市販のやつとは別物。時間が要る』

『どれくらい?』

『読めない』平原光は小さく首を振る。『家なら数時間で割れると思う。けど今は外だろ。機材も足りないし、回線も不安定だ。もっとかかるかもしれない』

平原綾香が一瞬黙り込んだ、そのとき。

後部座席の平原秋友が、車窓の外を指さして声を上げた。

『お母さん! 見て! 人が来た!』

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