第120章

平原綾香は、さすがに言葉を失った。まさか遠山景幸が、松村礼嗣にそんなことまで話しているなんて。

『……本当に、あの人があなたに……そんな話を?』

綾香は気まずそうに尋ねる。

『ああ』

松村礼嗣は鼻で笑った。

『しかも妙に丁寧にな。お前が一人で四人も子どもを抱えて大変だから、会社としてもっと配慮すべきだ、とか』

綾香は心の中で、深くため息をつく。

――遠山景幸、頭は飾りなの?

『それだけじゃない』

礼嗣が、わざとらしくゆっくり付け足す。

『お前の元夫はろくでもない男で、お前を捨てて、全部を押しつけた……ってな』

綾香は、生まれて初めて本気で瞬間移動が欲しいと思った。できる...

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