第123章

競売の日取りが、刻一刻と迫っていた。

松村グループ本社ビルの空気も、日を追うごとに張り詰めていく。投資部は連日の残業、会議室の灯りが深夜まで落ちないことも珍しくなかった。

平原綾香も、ここ数日は文字どおり息つく暇がない。

自分のスタジオのデザイン案件に加え、競売チームの議論にも参加しなければならず、毎日、膨大な資料を頭に叩き込む必要があった。

その日の午後。

会議室を出た彼女は、手元の書類に視線を落としたまま廊下を歩いていて――ふと、視界の端で廊下の突き当たりに立つ人影を捉えた。

顔を上げ、わずかに息を呑む。

遠山景幸。

このところ彼は、彼女を見かけるたびに避けるように距離を...

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