第130章

田原絵美菜は何か言おうとした。けれど、喉が自分のものじゃないみたいに震えて、声が出ない。

『絵美菜、落ち着いて。ゆっくり深呼吸して』

受話器の向こうで、平原綾香の声がすっと低く、安定した。

『おばさん、もう向かってる。すぐ着くからね。いい? 今から言うことをよく聞いて。動かないで、その場にいて。どんな音がしても、絶対に出てこない。わかった?』

田原絵美菜は必死にうなずいた。見えないとわかっていても、そうするしかなかった。

『いい子。怖がらなくていい。おばさん、すぐ行くから』

通話が切れた瞬間、田原絵美菜は岩の陰の狭い隙間へ身を縮め、スマホを両手でぎゅっと握りしめた。

泣き声だけ...

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