第132章

平原綾香はそう言い捨てると、くるりと踵を返して歩き出した。穴の底から松村明也がどれだけ叫ぼうと、彼女は一度も振り向かない。

『平原綾香! 俺をここに置いていく気か!』

『救急車なら、もうすぐ来るわ』綾香は背中越しに言った。『大人しく待ってなさい』

足を速めながら、綾香は周囲をきょろきょろと見回す。

この公園は思っていた以上に広い。木々は鬱蒼と茂り、分かれ道も多い。

『雪子! 小春!』

何度も呼ぶ。声が林の奥へ吸い込まれていく。

――返事はない。

胸の奥がざわつき、綾香はほとんど駆け足で林の中を抜けた。

東門が近づいた、そのとき。

視界の端に、大きな槐の木の根元で丸くなって...

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