第17章

松村礼嗣に手首を掴まれた瞬間、平原綾香は思った。――今日こそ、彼のサンプルを採れるのだろうか。

このまま、バレる……?

本人に黙って採取するなんて、追及されれば違法になりかねない。

松村礼嗣の視線を浴びた途端、まるで自分が一糸まとわぬ姿で立たされているような心地になった。

彼は手を離さない。それどころか、わずかに力を込めて綾香を引き寄せる。

距離は、半歩もない。

清冽な香りがふわりと届く。淡い赤ワインの匂いが混じっていて、綾香の顔色はさらに青ざめた。

どう説明すべきか言葉を探していると、松村礼嗣がふいに手を放し、何事もなかったように席へ戻った。そして、口調だけをさらりと切り替え...

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