第34章

松村の病室の扉は、わずかに開いていた。平原綾香は控えめに、こんこんとノックする。

「どうぞ」

中から聞こえたのは、穏やかな老婦人の声だった。

「今日の具合はいかがですか」

平原綾香がそっと問いかけると、松村は顔を上げ、来客が彼女だとわかった途端、ぱっと笑みを咲かせた。

「綾香さんじゃないの。さあ、座って。だいぶ楽になったわよ。ただね、お医者さまに『あと数日は安静』って言われちゃって。退屈でたまらないの」

平原綾香はベッド脇の椅子に腰を下ろし、体調のことを中心に、たわいない会話をいくつか交わした。すると松村は手にしていたアルバムをそっと置き、目つきを改めて綾香を見た。

「綾香さん...

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