第35章

大崎は平原寧々の鋭い叱声に、びくりと全身を震わせた。

足音も荒く迫ってくる平原寧々を、目を見開いて見つめる。唇がわなわなと震え、続きの言葉は喉の奥でつかえたまま、どうしても出てこない。

平原寧々は近づくより前に、遠目でもう見てしまっていた。大崎の、魂が抜けたような顔。ぐしゃぐしゃに濡れた頬。鼻水と涙で崩れた表情。

胸の奥が、ひやりと沈む。

さらに、平原綾香の手元に携帯らしきものがあるのが見えた瞬間、七、八分は察した。

――このバカ、口を割らされたに決まってる。

これ以上しゃべらせるわけにはいかない。

平原寧々は迷わなかった。早足のままスマホを取り出し、躊躇なく通報ボタンを押す。...

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