第39章

松村礼嗣は、無意識に平原綾香の様子が気になって仕方ないのに、隣では上野美咲が延々と小言を垂れ続けている。胸の奥が、理由もなくざわついて苛立った。

平原寧々との婚約は、ただの償いだ。申し訳なさがあって、責任を取るべきだと思った。

けれど――いざ結婚となると、足がすくむ。

この数年、寧々を愛そうと努力はした。だが、どれだけ頑張っても心は動かなかった。

そんな、微妙に空気が固まったところへ。

落ち着き払った、気品のある声が差し込んだ。

「美咲さん、それは少し言い過ぎでしょう。子どもたちのことは、子どもたちで話し合えばいいのよ」

松村のお婆さんがゆっくりと近づいてくる。慈愛の笑みは崩さ...

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