第40章

宴会場を出た平原綾香は、この時間にタクシーが捕まるのか不安になった。

深夜に差しかかり、しかも一流ホテルの正面玄関。空車はめったに来ない。たまに通っても、すでに客を乗せている。

――と、そのとき。

一台のロールスロイスが、彼女の目の前にすっと滑り込むように停まった。

ウィンドウが降り、松村礼嗣の彫りの深い横顔が覗く。

「平原さん」

柔らかな声だった。

「この時間はタクシーが捕まりにくい。送ります」

平原綾香は一瞬きょとんとして、すぐに首を振る。

「いえ、お気遣いなく。呼べば大丈夫ですから」

「気遣いじゃない」

松村礼嗣は淡々と続けた。

「祖母の指示だ。君が先に帰ったの...

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