第45章

「違う……私よ! 私なのよっ!」

 平原寧々はたちまち取り乱し、ぼろぼろと涙をこぼしながら彼にすがりつこうとした。

「礼嗣、忘れたの? あの夜のあと、小切手を持ってあなたのところへ行ったのは私よ!」

「初めてをあなたに捧げたのよ。責任を取るって、あなた言ったじゃない! これだけ長く婚約してきて、みんなが私をあなたの婚約者だと知ってるのに……今さら平原綾香みたいなクズにたぶらかされたからって、過去まで全部なかったことにするつもり? あの女、どれだけの男と寝たんだか。だからあんな父親の違う子どもを四人も――」

「黙れ」

 松村礼嗣の一喝が、鋭く空気を断ち切った。

「平原寧々、これ以上...

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