第51章

深夜、平原綾香がようやく仕事を片づけたところへ、病院から一本の電話が入った。

「平原さん、平原小春ちゃんの容体が急変しました。呼吸不全の兆候があり、ただいま救命救急で処置中です。すぐにお越しください!」

その先は、ほとんど耳に入らなかった。

耳の奥で、ぶん、と鈍い音が鳴った気がした。

自分がどうやってマンションを飛び出したのか、綾香にはわからない。車の鍵を持ったのかどうかさえ、記憶が曖昧だった。

救命救急センターに駆け込んだときも、小春はまだ処置の最中だった。

「平原さん」

主治医が綾香の前に立つ。表情は重い。

「平原小春ちゃんの病状が今夜、急激に悪化しました。こちらでも緊急...

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