第57章

平原明広は彼女の態度がわずかに軟化したのを見て、胸の内でようやく息をついた。さらに媚びるように二、三言、耳障りのいい台詞を重ねると、そそくさとその場を後にした。

彼が去ったあと、平原綾香はその背中を見送りながら、目を冷たく細める。

口では綺麗事ばかり。だが、実際の支援は一銭たりともない。

わざわざ来たのは、投資家に顔向けするための「責任者」を彼女に押しつけたいだけだ。ついでに、母の残したブランドへの情を利用し、平原家を救わせようという魂胆まで透けて見える。

    ◆

同じ頃、平原寧々のマンション。

一人の男が、彼女に報告していた。

「平原さん。調べはつきました。平原綾香は最近...

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