第79章

佐藤先生は、もう身体が脳の指示を受け付けていない気がした。平原秋友に導かれるまま、半ば機械のように奥へと進む。

本邸の扉が開いた瞬間――佐藤先生は、完全に固まった。

吹き抜けの玄関。きらめきが降り注ぐようなクリスタルのシャンデリア。視界いっぱいに広がる豪奢さに、目が追いつかない。壁に掛けられた絵画は価値など分からないはずなのに、ただならぬものだという気配だけは肌で感じ取れた。

『先生、こちらへどうぞ』

平原秋友が明るく先導する。

まるでドラマのセットに迷い込んだみたいだ、と佐藤先生はぼんやり思った。

『先生、まず座ってください』平原雪子が彼女の肩を押してソファへ促す。『お水、持っ...

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